『ことばに春風をまとう』小話

仏教には、人が苦しみを生む原因として“十悪”があります。
体の行い三つ、口の四つ、心の三つ。
その逆を心がける十善戒は、心を正しく整えるための道しるべのようなものです。
口は禍の元。
中でも口に関する教えが一番多いのは、言葉が思わぬかたちで誰かを傷つけたり、自分に返ってきたりするからでしょう。
噂話や悪口も、結局は周り巡って自分の評判を曇らせてしまうのかもしれません。
それでも昔からゴシップは、つい耳を傾けてしまう小さな娯楽でもありますね。
だからこそ、せめて“口の使い方”はやわらかくしてみたいところです。
怒りのひと言が小さな棘になって相手に残ることもあれば、ほんの「おつかれさま」が誰かの心をふっと軽くすることもあります。
どうせなら、身を刺すような冷たい風よりも、そっと背中を押す春の風のような優しい言葉を届けたいものです。
そうした小さな思いやりの積み重ねが、気づけばふんわりと、自分の世界にも春の気配を連れてきてくれるのだと思います。
合掌